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PCC 公認・感情ミラー「キミノコエ Ver. 2.0」— 音声のない対話端末を試す

話しかけるな。映せ。それでわかる。

楕円形の薄い鏡が壁に掛かっている。鏡面には、微笑む人物のぼんやりとした反射。よく見ると、鏡の縁には小さなカメラレンズと、PCC の刻印。部屋の照明は鏡の前に立つ人間には当たらず、鏡面だけが不自然に明るい。
楕円形の薄い鏡が壁に掛かっている。鏡面には、微笑む人物のぼんやりとした反射。よく見ると、鏡の縁には小さなカメラレンズと、PCC の刻印。部屋の照明は鏡の前に立つ人間には当たらず、鏡面だけが不自然に明るい。

PCC 調和機器開発部がリリースした『キミノコエ Ver. 2.0』は、鏡のように見える端末だ。電源を入れると、自分の顔が映る。ただ、ほんの一瞬遅れて映る。——自分の表情が、半拍ずれて画面に表示される。そのずれを見つめていると、画面の自分が、自分よりも先に微笑むことがある。

説明書にはこう書いてある。「本製品はあなたの潜在的な感情スペクトルを推定し、最適な表情を 0.2 秒先行提示することで、より円滑な対人調和を支援します。」つまり、自分が笑う前に、機械が『笑うべきタイミング』を教えてくれるのだ。会議の前、面接の前、PCC の定期面談の前。——鏡をのぞけば、正しい顔がわかる。

気になるのは、夜中にふと目を覚ましてこの鏡を見たとき、映っていたのが自分ではなかったことだ。いや、たぶん気のせいだろう。PCC はすべての製品に不具合がないことを保証している。

総評: 便利だ。なくても生きていけるが、一度使い始めると、自分の顔が正しいかどうか、自分では判断できなくなる。——それがおそらく、意図された仕様なのだ。

rating3.8 / 5.0
調和網PCC公認キミノコエ感情ミラー表情調整適合補助機器
※ これは架空の並行世界を描いたフィクションです。実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。